華やかでつい見入ってしまう細工かまぼこ
日本人はちょっとした食べ物にも美を追求し、食べておいしいだけでなく、見て楽しいものにするというのがとても得意です。
その特徴的な食べ物と言えるのが細工かまぼこです。
庶民の食べ物として発達してきたかまぼこに、様々なデザインを施し美しく仕上げ、果てはおめでたい席の飾り物として使用されるまでになっています。
細工かまぼこはいろいろなタイプがありますが、全体的に松竹梅や鯛、鶴、お花などの色鮮やかで華やかなものが多い傾向にあります。
シンプルなものとしては、かまぼこを昆布で巻いた昆布巻きがあり、これは細工かまぼこのルーツとして考えられているほど歴史の古いものです。
実にたくさんの種類があり、それぞれの職人が思い思いに心を込めて意匠を凝らしています。
練り製品の発達した富山で古くから伝わる
細工かまぼこの発祥についての説はいろいろありますが、富山で古くからの伝統として細工かまぼこが用いられていることから、ここにルーツがあるという見方が有力です。
もともと、婚礼の席などで鶴や松などのデザインを施した細工かまぼこが作られていて振舞われていました。
また、漁から帰ってきて不漁だった時に、本物の魚の代わりに細工かまぼこを用意して労をねぎらったところから来ているという説もあります。
なんにせよ、富山は練り物の歴史が古く、人々にとても愛されてきたという歴史があります。
現在でも全国的に水産練り製品の消費量がとても多く、トップクラスにあります。
そうしたかまぼこへの愛が細工かまぼこという、美しい加工品を生み出すことにつながったのでしょう。
職人の美意識が詰まった細工かまぼこ
細工かまぼこは、ありとあらゆるデザインを施すことができます。
しかし、細工かまぼこは主に祝いの席など、めでたい場で使われることがほとんとということもあって、華やかなデザインのものが大半を占めます。
鯛や鶴などの縁起の良い動物を筆頭に、色鮮やかな花や松、梅、竹などが用いられることが多く、日本人の美意識をよく反映しています。
パッと見るだけでなんだか気持ちが華やいでくるのが、この細工かまぼこの魅力であり、お祝いということと密接に結びついていることが分かります。
また、本物の魚とは違って細工かまぼこは、保存が効き長持ちするため、扱いやすく様々なシーンで利用できるというのもメリットです。
さらに、どの部分を切っても見栄えがよく、失礼に当たらないというのも使いやすいゆえんでしょう。
本物の魚だと、切った時に頭を出すか尾を出すかでもめることもありますが、細工かまぼこであればそんな心配もいりませんので、安心していろいろな場で用いられるのです。