若者を未来の管理者へ育てる
この感染症の危機を受け、飲食業界は未曾有の危機に見舞われております。
これからますます、生産管理の改革を行い、常に見直し行ってゆかなければ、生き残ることはできない現実が立ちはだかっています。
そんな中、私たちのような零細工場へも新卒の若者が入社してくれたのは大変ありがたいこと。
私は彼を未来の管理職として迎え入れたのです。
しかし、工場に就職した多くの若者の離職率はとても高い……。
適切な指導や育成をしなければ、すぐに辞めてしまいます。
ここでは、我工場へ新卒で就職してきた若者Hさんとのコミュニケーションを通じて、私が思っていることについて書いていきます。
Hさんのひととなり
Hさんは富山大学を卒業して、入社した22歳の男性です。
大学では工学部を専攻していたので、喜んで私は採用を決めました。
なぜ農学系の人材じゃなかったかといえば、大量生産を前提にしている食品会社には、工学的なセンスのある人が必要だったからです。
Hさんは神奈川県出身ですが、進学校を富山大学に選んだのは、彼のその穏やかな性格も関係しているようです。
富山大学のある富山市は壮大な北アルプスの山脈と水深深く、魚の豊富な富山湾に隣接した自然豊かな場所。
地域交流が盛んと聞く富山大学は、地域住民とコミュニケーションも大切にしています。
Hさんは人口の約30%が高齢者の富山市内の学生マンションで4年間をすごしたそうです。
初めてお会いした時に、その穏やかで人当たりの良い性格に感銘を受けました。
我々の工場の従業員の年齢層は底上げされ、40歳になる社員ですら若者と呼ばれています。
彼らは、もう10年以上も働いてくれていて、自分のやるべきことを理解し、品質の良い仕事を確実にやってくれる最も必要な人材であることは間違いありません。
けれども、変化を嫌う彼らは進んで新しいことをしようとする気持ちが湧いてこない傾向があります。
私はHさんが入ることでどんな化学反応が起きるのか非常に興味がありました。
22歳のHさんは、熟練の社員にとっては孫のように映っていたかもしれません。
しかし、「根性論」でやってきた世代の社員は、新しい人に何かを教えることが苦手なひとばかり。
様子を見ていたら誰もHさんに近づこうとする人はいませんでした。
なので、私が直接教育指導することにしました。
若者の本音こそ変革の鍵
Hさんには管理者として育てるため、私も作業に入りながら、つきっきりで進めました。
しかし私がどうしても持ち場を離れなくてはいけない時があり、しばらく誰かに見ていてもらうこともありました。
私が戻ってくると彼はポツンと孤立して、誰とも話をしていない様子です。
2人になったときに話を聞くと「みなさん忙しそうで仕事を教えてもらえる暇が無いようでした」と言いました。
この言葉は、コミュニケーションを取らない指導者を作ってしまった、私のこれまでの体制づくりが間違っていたことを痛感させられました。
その他にも、いろいろと変革したほうがいいことをざっくばらんに聞いてみると
- 「作業着がダサイ」
- 「ゲーミニフィケーション的な要素が欲しい」
- 「年功序列の文化」
など、ストレートな意見を聞くことができました。
手を取り合って変革進める
こうしたことを言う若者に対してたしなめたり、怒ったりする指導者は多いのではないでしょうか。
しかし、そうすることで若者の本音や新しい意見はもう二度と吸い上げることはできなくなってしまいます。
こうした意見はとても貴重で、今後工場で働く人を増やすためのヒントがあるのです。
私たち指導者は、そうした意見を決してつぶしてはいけないと思います。
最近の若者って……じゃなくて経営者の覚悟
「最近の若者はコミュニケーションを取らない」と嘆くのではなく、私たちが若者を受け入れる環境を創らなければいけないのです。
なぜなら、私たちはぐずぐずと停滞している訳にはいかず、お互いが手を取り合って変革を進め、新しいステップへ登っていかなければすぐにつぶれてしまうからです。
過保護だとか甘やかしすぎだという意見もありますが、私にとっては叱ったり、たしなめたりするよりずっと大変だったりします(笑)。
しかし、若者の可能性を信じてあげることも、これからの経営者に必要な覚悟だと思います。