水産練り物独特の表現であるかまぼこの「足」
食べ物にまつわる表現というのは実に豊富で、しゃれに富んだものも多くあります。
それだけ、日本人から昔から食というものを大事にしてきて、高い感性で味や食感の評価をしてきたということを示しています。
日常的にも独特の表現が食品に対して用いられてきていて、たとえば「腰」という表現があります。
うどんやラーメンなどの麺類でよく使われる言葉ですが、歯ごたえや弾力などの強さや心地よさを表すために用いられています。
それと似たような表現がかもぼこにも使われていて、「足」という言葉が業界や通の間で用いられています。
このかまぼこの「足」も、麺類に使われる「腰」と似ていて、噛んだ時の食感や歯ごたえのことを評価するために使われます。
「足」がしっかりとしているかまぼこの方がおいしいということになります。
どんなかまぼこの「足」がいいのか?
かまぼこの評価は、当然味が大きな部分を占めますが、同時に食感というのも非常に重要なポイントです。
では、どんな「足」がいいのかというと、滑らかでありつつもしっかりとした弾力があり、心地よい噛み応えを感じられるものとされています。
とはいえ、硬いということではなく、噛んでいくうちに自然となくなっていくような、魅惑的な「足」を持っているかまぼこがおいしいと感じられます。
かまぼこの粘りのある弾力というのは、練り物独特の食感で口の中で楽しい感覚を与えてくれるものとなります。
柔らかすぎると、滑らかさはあるものの、噛み応えがなくなってしまってこの感覚を楽しめなくなってしまいますので、バランスよく食感を残すことが非常に大事になってきます。
たんぱく質と塩の量でかもぼこの「足」を決めていく
このように、かまぼこのおいしさを左右するのは、心地よい弾力がある「足」ということになりますが、この「足」は塩によって主に生まれます。
魚介類のすり身に含まれているたんぱく質が塩分と結びつくと、タンパク質が弾力を生み出すようになるのです。
具体的には、元々ある繊維状のたんぱく質が塩などによって溶けていき、加熱することによって再び網目状になって回復します。
この網目状のたんぱく質が独特の食感をもたらすことになりますので、塩分の微妙な調節がかまぼこの絶妙な「足」を作り出すということになります。
そのため、かまぼこ製造においては、魚の風味豊かな香りと味を残しつつも、心地よい弾力を作り出すために塩分の調節を細かくすることがカギとなるのです。
これからかまぼこをいただく際には、その独特の「足」に注意して食べてみて、どのようにしてこの心地よい食感が作られているのかを思いめぐらしてみましょう。